今回は中堅企業がはじめるHRテクノロジー活用への「はじめの一歩」として”クラウドの活用”、”労務管理の効率化”、”社員データの一元化”についてお話します。
前回のアンケート結果より中堅・中小企業では、”HRテクノロジーの必要性は感じているが、充分な費用対効果を出すことができるか不安”、”時間的・人的余裕がなく着手できていない”などの理由が大きな課題になっていることが分かりました。
HRテクノロジーという新しい仕組みを組織に導入するには、相当なパワーが必要となります。一方で、すぐに効果が現れるわけでもなく、新しいジャンルで、他社での成功事例が少なければ、既存業務をこなしながら導入を進めることは、時間的・人的余裕がない状況からすると消極的になってしまうのが実情です。
また、忙しいながらも、現在の人事部の体制に大きな問題が生じていないという理由で導入を先送りしてしまう状況もあります。利便性やコストを考えれば、ベストな状態とは言えませんが、「社員データはExcelで管理できている」「労務管理手続きもExcelでの書類作成や郵送で問題ない」など、大きな支障がなく仕事を回せている状態であれば、現時点でその体制を変えようとは、なかなか考えることはできません。
・HRテクノロジー活用への「はじめの一歩」
つまり、経営者や人事部の責任者である皆様が「人材マネジメントを強化しなければ、将来的に、企業間の競争には生き残れない」という危機感を持ち、HRテクノロジーの導入を決断できるかどうかにあります。将来のことを考えるならば、出来る限り早く、人事業務の効率化や組織・社員データの収集に取り組む必要があります。
しかし、いきなりデータを活用した難しい分析などを導入しようとしても、ハードルが高く、途中で挫折する、あるいは導入できたとしても、結局運用されなくなるケースをよく聞きます。例えば「タレントマネジメント」です。最近は「データを活用した科学的人事戦略の実現」などのように、大企業、先進企業を中心に「人事管理」から「データ活用」にシフトし始めていますが、導入のためには最低限の従業員データを集約することから始める必要があります。
その為、まずは顕在化している問題から着手すると効果を実感しやすいと言えます。ただし、人事業務の領域は広く、先のアンケート結果においても「様々なツールやテクノロジーがあり、どこから着手すればいいか判断が難しい」という回答も17%ありました。そこで「はじめの一歩」として、「クラウドの活用」「労務管理の効率化」「社員データの一元化」をご提案します。
①クラウドの活用
総務省のデータでも、すでにクラウドの導入が進んでいることが分かります。
出典・引用:総務省「企業におけるクラウドサービスの利用動向」(令和元年版)
グラフ1では、2018年においてクラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は58.7%であり、前年の56.9%から1.8ポイント上昇しています。またグラフ2では、多くの企業でクラウドサービスの効果を実感しており、クラウドサービスの効果については、「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答した企業の割合は83.2%となっています。
出典・引用:総務省「企業におけるクラウドサービスの利用動向」(令和元年版)
グラフ3では、利用しているクラウドサービスは「ファイル保管・データ共有」の割合が53.1%と最も高く、「給与、財務会計、人事」は31.9%にとどまっているものの昨年の27.1%から4.8%伸びている状況で、HRテクノロジーの活況により、利用者はさらに伸びる見込みであることが分かります。グラフ4では、クラウドサービスを利用している理由としては、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」(41.6%)が最も多く、次いで「どこでもサービスを利用できるから」(33.8%)、「サービスの信頼性が高いから」(31.9%)などの結果となっています。
特に人事給与システムにおいては、クラウド化することにより、社会保険労務士など外部の専門家ともつながることができるため、従来のように給与計算や社会保険手続などのために、必要なデータを都度メールなどで送るなどのやりとりが大幅に削減されます。