■経理DXの進め方
今回は、経理DXのすすめ方についてお話しいたします。こちらの記事の続きとなります。
経理DXはどうすすめるとよいか?
結論から申し上げますと、「業務全体の最適化を目指し中長期の計画で進める」ことが最適解となります。登山にたとえるとイメージしやすいです。
1~4の内容につき、詳しく見ていきましょう。
■ステップ1:目標を決める
目標はコンパクトなバックオフィス体制をつくること
継続企業を目指す限り「会社を成長させる」という目標はどこの企業も共通かと思います。それを実現する手段がDXです。
そのためには、会社の競争領域への投資を積極的に進めるため、バックオフィスなどの協調領域はできるだけコンパクトにとどめる必要があります。
経理の場合は、最小限の人員で経理を回せる体制をつくることが必要と言えます。
ところで、バックオフィス部門は何人が適正なのでしょうか?
以下の表は、”経済産業省 2022年企業活動基本調査確報第8表産業別、企業数、事業組織別従業者数”より抜粋したものになります。
「その他の部門」とは、総務、経理、人事等のバックオフィス部門を指しています。
表の細かい読み方は割愛しますが、バックオフィス人数割合は5.5%程となります。
100人の企業であれば5.5人ですね。ただ、業種により幅があり、1-2%のケースもあれば、10%のケースもあります。
1つの目安として、参考にしてみてください。
ただ、少ないからと言ってすぐに増やすことはできません。
経理人材は採用困難です。“優秀な”経理人材の方はなおさらです。
中小企業においては、経験者を即採用する(できる)、という場面よりも、未経験者を採用・教育する(せざるを得ない)、という場面の方が多いです。
今いる人材を最大限に活かす必要があり、これを実現するのが経理DXです。
DXの投資を「短期的なもの」「とりあえず目先の法改正対応」ととらえる場合と、「長期的なもの」「根本から変えていくもの」ととらえる場合があります。
経理DXと、企業における人的資源の活用、HRM(Human Resource Management)を紐づけて考えた時、「長期的なもの」「根本から変えていくもの」ととらえる必要があることがご理解いただけると思います。
経理人材の教育は、短期では難しいですものね。
DXには3段階のステップがあると言われています。
経理DXは、『デジタライゼーション』を指しています。
なお、前回の記事で例示した、「安価なストレージ」は、『デジタイゼーション』を指します。
■ステップ2:ルートを決める
全体最適を目指し、効果の高いところからはじめる
目標を決めたら、次はルートを決めましょう。山登りに例えてきましたが、頂上までの道のりはたくさんの種類があります。どういったルートを選ぶのが良いのでしょうか。
ポイントは、目先の課題だけを追わずに、全体を眺めてとっかかりを見極めることです。
「全体を眺める」具体的な方法ですが、一度バックオフィス全体の「鳥瞰図」を描いてみることをお勧めします。下図は一例です。
鳥瞰図を描き終えたら、これを基礎に以下作業を行います。
1. 全体の問題点を洗い出す
2. ありたい姿を描いてみる
3. 優先順位を決めて計画を立てる
順にみていきましょう。
この作業のポイントですが、経理業務だけでなく、フロントオフィスも含めて検討してみることです。簡単でいいので、どこの業務にどんな問題があるのか?わかる範囲で書き出します。いわゆる「As-Is分析」です
この作業は、ITベンダーやOA商社などに相談してもよいです。より中立的な立場でのアドバイスが必要であれば、コンサルタントや銀行や税理士などに相談するのもよいでしょう。協力者と相談しながら、問題点の原因を探り、システムで解決できるのであれば、問題点を解決する方向性を示すような図に置き替えてみます。いわゆる「To-Be分析」です
3. 優先順位を決めて計画を立てる
例えば、2024年から経理を順番に進め、並行して2025年から人事、のように、何からはじめるか?いつやるのか?全体でいくらかかるのか?といった優先度を整理します。経理DXの全体像がわからないと経営者も決済できません。
計画の重要性は、社内の決済の他、IT導入補助金にも関係します。
IT導入補助金は採択まで短くても3カ月はかかります。優遇制度を活用するためにも、先々までの計画が必要となります。
優先順位を決めることが必要なのは理解できるものの、実際に決めるのはなかなか難しい。
そういったお声をよく耳にします。そんな時は、以下の理由よりとりあえず「財務会計+債務支払」から始めてみることをおすすめしています。
・債務支払は転記が多いため、改善効果を出しやすい
・会社固有の要件が少なくパッケージソフトのフィット率が高い
「財務会計+債務支払」が導入できたら、次は周辺業務にステップアップしましょう。
「経費精算」「債権回収」「管理会計」といった業務ですね。ただこれらを一度にまとめて導入していくのは大変なので、段階的に進めていきましょう。
■ステップ3:ポイントをおさえて進む
業務改善の肝は「一気通貫」の業務フローをつくること
「一気通貫」はもともと麻雀の言葉ですが、最近ビジネスの現場でもよく使われるようになりました。ここでは、「一度入力したら終わり」「入力した内容が正しければ、出力する内容も正しい」という状態とイメージしてください。
どうでしょう、皆さんの業務を思い返していただき、「一気通貫」の状態でしょうか?
そもそも、システムを導入する目的の一つがこの「一気通貫」であり、システムを使っていれば自然と「一気通貫」の状態になるものなのですが、いつの間にかこの状態が崩れてしまっている、と感じている方も多いのではないでしょうか。
どういう場合に崩れてしまうのかというと、「関係者やシステムが増えた場合」が挙げられます。
電卓の例(失敗例)と、受取請求書の例(成功例)を挙げてみます。
・電卓の例(失敗例)
電卓は、「1」「+」「1」「=」と押せば、必ず「2」が出てきます。一気通貫です。
しかし、計算式が複雑になって「=」を押すまでに担当者が複数人登場して随時引き継いでいる、といった場合や、「2」という出力を他の電卓に入力しなければならない場合などは、改めて人の手で「2」と入力することになり、ミスが発生するスキが生まれてしまいます。
・受取請求書の例(成功例)
まず請求書を受領し、担当者がデータを手入力します。OCR機能が使えれば手入力も不要で、自動入力されます。請求書をスキャンしてデータ化し保存しておけば、その後は入力することはありません。そのデータを活用する、確認するだけになります。そういう業務フローを作るのが理想で、まさに一気通貫です。
一気通貫の業務フローを弊社がお手伝いさせていただいた事例を別記事でご紹介してます。ぜひご覧ください。
https://bugyo-navi.jp/導入事例:東京アセットソリューション様の経理/
■ステップ4:頼れるガイドと一緒に進む
中小企業のDXを応援するパートナーを活用する
【2024年9月に公開予定です】
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