今回の「人材マネジメントのためのHRテクノロジーの活用について」は本記事で最後となります。前回までの記事では”人材マネジメントの重要性”から”HRテクノロジーの導入・活用方法”までをお話しました。

本記事では”HRテクノロジーの導入効果をさらに高めるためのアウトソーシングの活用”についてお話します。

・HRテクノロジーの導入効果をさらに高めるアウトソーシングの活用

　HRテクノロジーの導入効果をさらに高めるために、給与計算や社会保険手続などの業務自体をアウトソースしてしまう方法もあります。近年は企業の好業績と人材不足を背景に、人事総務系業務のアウトソーシング需要が拡大しています。かつては、大企業でないと費用対効果が出ないと考えられていましたが、デジタルテクノロジーの進化により、システムに関わるコストが大幅に低減されたので、中堅・中小企業にとっても検討しやすくなりました。人材マネジメントなどの本業に経営資源を集中投下する一方で、給与計算や社会保険手続などの事務業務の効率化を目的としてアウトソーシングが活用されるようになっています。

　給与計算や社会保険に関する法律や制度は専門性が高く、また頻繁に変わります。そもそもの担当者の採用難に加え、知識のアップデートをしていくことも大変です。書類の記載ルールも複雑であり、記載内容の誤りや提出不備による役所との問い合わせ対応など煩雑な事務が残ることになります。また届出の種類も多く、電子申請に対応できていない場合は、従前通り書面による申請が残ることになります。また電子申請を行うためには、電子証明書を取得するなど、利用準備も必要です。アウトソーシングを利用すれば、2～3か月程度の移行期間で、専門性の高い給与計算や社会保険手続きであっても正しく速やかな届出が可能となります。

　また、HRテクノロジーにより、アウトソーシングベンダー側のサービス提供の仕方も様変わりし、給与計算や社会保険手続きという主業務の周辺領域にまで提供範囲を拡大しつつあります。「クラウド人事労務ソフト」を活用することにより、従業員から手続きに必要な情報を収集する業務を効率化することができます。給与計算や社会保険手続のために収集した社員データを人事データベースとして集約し、クラウドを活用して顧客企業に提供することが出来るようになりました。

　顧客企業側は、給与・社保以外に必要となる情報を同じデータベースに蓄積し、タレントマネジメントなどに活用することができます。

アウトソーシングを検討する場合は、これらのHRテクノロジーに対応できるベンダーを選定する必要があるでしょう。

・HRテクノロジーを活用する「デジタルHR」へ

　最近は「デジタルトランスフォーメーション（DX）」という言葉が流行っています。デジタルテクノロジーを駆使して、経営の在り方やビジネスプロセスを再構築することであり、結果として、人とテクノロジーとの関係性を変化させ、顧客との関係や従業員の働き方などを大きく変えてしまうことになります。

　これからの人事部は、HRテクノロジーを使いこなし、自社のビジネスに貢献できる、経営において欠かせない部署である「デジタルHR」にならなければなりません。そのためには、今までの「社員を管理し、事務業務を予定通りに回す部門」から「従業員一人ひとりの能力を開放し、ビジネスに貢献する部門」へとその体制と業務内容を変えていく必要があります。HRテクノロジーが社内に浸透すれば、人事部は、採用時の煩雑な事務や労務管理などの事務業務から開放されます。効率化によって生まれた時間は、組織や従業員のパフォーマンスを高めるための人事施策を考え、実行するために当てることができます。具体的には、分析したデータをもとに戦略的な人材育成を構想して経営者へ人事戦略を提言し、組織強化や人事管理のノウハウをもとに現場のマネージャーを支援するなど、人材マネジメントの専門家として企業の成長に貢献することになります。

　これまで積み重ねてきた人事の知識やスキルに加え、HRテクノロジーを使いこなすことにより、皆様の本領が発揮できる時代になりました。当アクタスグループも皆様にとって価値のあるHRテクノロジーに関する情報提供をして参ります。また、アウトソーシングや労務相談、コンサルティングなどのサービスにより、皆様が本業である人材マネジメントの改善に注力できるよう精一杯のご支援をさせていただきます。

引き続き当社ならびに奉行ナビをよろしくお願いします。