スキャナ保存制度を理解する
令和 3 年度改正により大幅に緩和され導入しやすくなりました。
- 税務署長の事前承認制度が廃止され、利用しやすくなりました
- タイムスタンプの付与期間が最長2ヶ月と7営業日以内となりました
- 受領者等がスキャナで読み取る際の書類への自署が不要とされました
スキャナ保存制度の概要と保存要件
- スキャナ保存制度の概要と対象書類
-
スキャナ保存制度は、相手先から受領した領収書などの取引関係書類等について、「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たして書類をスキャナして保存した場合に、そのスキャンしたデータの保存をもって書類の保存に代える制度であり、受領した紙の書類を廃棄することが認められる制度です。
スキャナ保存制度を導入した場合、会社の基本的な業務の流れは、次のようになります。
原則的に全ての書類が対象となります。スキャナ文書により保存するか、従前どおり紙により保存するかは、書類の種類ごとに選択することができます。従って、相手方から取得した請求書や領収書のみをスキャナ保存することも可能です。対象となる書類は、重要書類と一般書類に区分されます。
【重要書類】 資金や物の流れに直結・連動する書類 ・・・・契約書、領収書、請求書、納品書等
【一般書類】 資金や物の流れに直結・連動しない書類・・・見積書、注文書、検収書等
【スキャナ保存の対象書類の区分】
(注)重要度が低以外のものがいわゆる重要書類(法第4条第3項に規定する国税関係書類のうち、規則第2条第7項に規定する国税庁長官が定める書類以外の書類)、重要度が低のものが一般書類(規則第2条第7項に規定する国税庁長官が定める書類)です。
電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】令和3年7月国税庁 問2参照
- スキャナ保存制度の保存要件
- スキャナ保存制度の適用を受けるためには、次の表の「真実性及び可視性の確保にあげられている13項目の要件」を満たすことが必要となります。
スキャナ保存に係る要件 | 重要書類 | 一般書類 | ||
---|---|---|---|---|
真 実 性 の 確 保 |
入力期間の制限 | ◯ | 適時入力 | |
電 子 計 算 機 処 理 シ ス テ ム |
一定水準以上の解像度(200dpi 以上)による読み取り | ◯ | ◯ | |
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256 階調(約1677万色)以上) | ◯ | 白黒階調 | ||
タイムスタンプの付与 | ◯ ※1 | ◯ ※3 | ||
解像度及び階調情報の保存 | ◯ | ◯ | ||
大きさ情報の保存 | ◯ ※2 | 不要 | ||
ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認等) | ◯ | ◯ | ||
入力者等情報の確認 | ◯ | ◯ | ||
可 視 性 の 確 保 |
スキャン文章と帳簿の相互関連性の保持 | ◯ | ◯ | |
見読可能装置(14 インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け | ◯ | 白黒対応 | ||
整然・明瞭出力 | ◯ | ◯ | ||
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け | ◯ | ◯ | ||
検索機能の確保 | ◯ | ◯ |
※1 入力期間内に、入力したことを確認することができる場合、その確認をもってタイムスタンプの付与に代えることができる。
※2 受領者等が読み取る場合、A4以下の書類の大きさに関する情報は保存不要。
※3 国税関係書類に係る記録事項を入力したことを確認することができる場合、タイムスタンプの付与に代えることができる。
「ここ」がポイント!
入力期間の制限
スキャナ保存制度の適用を受ける書類は、「スキャナ入力」する期間について、次のいずれかの方式によらなければなりません。
1. 早期入力方式
国税関係書類に係る記録事項の入力を、その作成又は受領後速やか(7 営業日以内)に行う
2. 業務処理サイクル方式
国税関係書類に係る記録事項の入力を、その業務の処理に係る通常の期間(2 ヶ月以内)を経過した後速やか(7 営業日以内)に行う
3. 適時入力方式(一般書類の場合のみ)
見積書や納品書などの一般書類に限り、上記の入力期間の制限はなく、適時に入力することが可能です。
「ここ」がポイント!
確認することができるシステムに格納された状態にすることをいいます。
・スキャナ入力する期間を業務サイクル方式とする場合は、早期入力方式と比較して処理を行うまでの期限を長
くとれる一方、「国税関係書類の作成又は受領から入力までの各事務の処理に関する規程」を定める必要があ
ります。規程のサンプルは国税局のサンプルを参照ください。
参考資料(各種規程等のサンプル)|国税庁 (nta.go.jp)Webサイト
「国税関係書類に係る電子計算機処理に関する事務の手続を明らかにした書類(Word/16KB)」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
タイムスタンプの付与と不要となる場合
- タイムスタンプが不要となる場合
- 電磁的記録の記録事項に係る訂正又は削除の履歴等を確認することができるシステムに、入力期間内に電磁的記録を保存したことが確認できる場合については、その確認をもってタイムスタンプを不要とすることができます。
- タイムスタンプの付与が必要な場合
- 国税関係書類の作成又は受領後、入力期間内に、単にスキャニング作業が終えていればよいのではなく、電磁的記録の真実性を確保するためタイムスタンプを付し、その後その電磁的記録の訂正又は削除の履歴が確保された状態にする必要があります
検索機能の確保について
スキャナ保存された国税関係書類に係る電磁的記録を検索できる次の機能を確保する必要があります。
1)「取引年月日」、「その他の日付」、「取引金額」及び「取引先」を検索条件として設定できること。
2)日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件設定できること。
3)二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定できること。
システム上検索機能を満たせない場合は、以下の方法を取ることで要件を満たしているものとして取り扱われます。
国税関係書類に係る電磁的記録のファイル名に、規則性を有して記録項目を入力することにより電子的に検索できる状態にしておく方法
当該電磁的記録を検索するために別途、索引簿等を作成し、当該索引簿を用いて電子的に検索できる状態にしておく方法
「ここ」がポイント!
必ず入力する日付や金額以外の「取引先」をどう入力するか検討する必要があります。
・税務調査時のダウンロードに応じることで、範囲指定や「日付」と「金額」、「取引先」と「金額」などの
組み合わせ検索ができなくとも良いこととされました。
重加算税の加重措置
スキャナ保存の電磁的記録に記録された事項に関し、隠蔽又は仮装された事実に基づき修正申告等があった場合は、重加算税が10%加重されることになります。
実務上のポイント
令和3年度の税制改正により、次の要件が緩和され、導入が容易となりました。
税務署長への事前承認制度は廃止
適正事務処理要件の廃止
「相互けんせい」、「定期的な検査」、「再発防止策」の社内規程整備を行う適正事務処理要件が不要となり、スキャン後に最低限の同等確認を行った後は、即時の廃棄が可能となりました。また、事務処理における相互けん制に関しても廃止され、1名での対応が認められています。
受領者が自分でスキャンする場合の要件緩和
領収書への自署が不要となり、タイムスタンプを付与する期限が「おおむね3営業日以内」であったものが、「最長2ヶ月とおおむね7営業日以内」とされました。
タイムスタンプを不要とする要件の追加( の 1 参照)
電磁的記録の記録事項に係る訂正又は削除の履歴等を確認することができるシステムに、入力期間内に電磁的記録を保存した場合については、タイムスタンプを不要とされました。
検索機能の確保の要件緩和
検索要件は、「日付、金額、取引先」に限定されました。また、税務調査の質問検査権に基づくデータのダウンロードの求めに応じる場合には、「範囲を指定しての検索」及び「組み合わせ検索」の要件は不要となります。
「ここ」がポイント!
不正防止や円滑に導入するために、まずは既存の社内承認フローにのせて1ヶ月ごとの処理が完了後に
廃棄するなどの対応を行いましょう。
個人立替精算関係の領収書から始めるなど、自社にとって電子化しやすい書類を検討しましょう。